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参考資料

【知識/技術】担当者が知っておきたい遺伝子組換え作物の知識④(検査法の違いとPCR法)

第2回では遺伝子組換え作物がどのように作られるか概要を確認しました。今回は第2回の続編として、遺伝子組換え作物の検査法について見ていきたいと思います。第2回の理解がベースになっていますので、第2回も合わせて確認して頂くとよく理解して頂けると思います。

 

イムノクロマト法とPCR法の使い分け

 

イムノクロマト法は遺伝子組換えにより発現する特定のタンパク質を、抗原抗体反応を利用して測定します。試験紙による簡易な方法で測定ができ、また結果が判明するまでの時間も数十分程度であるため、エンドユーザー向けにスクリーニングとして多く用いられています。GM農産物の開発企業では、商品化に合わせて当該系統(遺伝子組換え体DNA)で発現するタンパク質を検査するキットとして,ELISA(酵素免疫測定(Enzyme Linked Immunosorbent Assay; ELISA))またはラテラルフロー(イムノクロマト)を販売している場合が多くあります。

但し、イムノクロマト法は存在の有無を確認する定性試験であるため検体中の濃度を測定することはできません。サンプリングを数多く行い統計的に母集団の濃度を推定する方法も考えられなくはないですが、直接的な方法ではないため、量的な測定には後ほど説明するPCR法が用いられています。

また、加工品では加熱、高圧力、pH等の変化によりタンパク質が変性(構造が変化)している可能性があり、目的とするタンパク質が検出できない可能性が高くなります。また、検査用に標的とするタンパク質に特異的な抗体の生産が必要になります。

このため、イムノクロマト法は製造現場などで実施される簡易な検査という位置づけになっており、消費者庁HP掲載「別添_安全性審査済みの組換えDNA技術応用食品の検査方法」および「JAS 分析試験ハンドブック遺伝子組換え食品検査・分析マニュアル第 3 版」ではポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction; PCR)法が用いられています。以下では、PCR法について見てみたいと思います。

ポリメラーゼという DNA 合成酵素を使って、プライマーで挟まれた特定領域の DNA 断片を増幅(複製)する方法であり、わずかな量の DNA から短時間に大量の DNA 増幅断片を得ることができます。食品や飼料のような複雑な成分を含む対象物からでも精確に検出でき,DNAの分解が起きていなければ定量することも可能であるため,多くの検査会社ではこの方法を用いています。

検査の大きな流れは以下の6つの手順です。遺伝子組換え作物に特異的なDNAを増幅し、これを電気泳動写真で確認します。その他にリアルタイムPCRにより定量しながら確認する方法もあります。

 

1.試料の破砕・均一化

2.DNA抽出DNA精製度の確認と定量

4.PCR増幅

5.アガロースゲル電気泳動によるPCR増幅産物の確認

6.結果判定

 

以下の図はPCRによりGMダイズに特有なDNAが増幅する過程を説明したものです。

本稿ではPCR法の原理そのものではなく流れのみ説明させて頂きました。Webで検査するとDNAそのものや、ポリメラーゼ連鎖反応の原理等、数多く解説されています。ご興味のある方は是非検索してみてください。