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参考資料

【知識/技術】担当者が知っておきたい遺伝子組換え作物の知識②(遺伝子組換え技術)

今回は、遺伝子組換え作物はどのように作られるか触れ、遺伝子組換え作物の検査法の理解につなげたいと思います。

 

遺伝子組換え作物は、害虫耐性など望ましい性質を持つ他生物の遺伝子を、目的とする作物に入れることによって品種改良された作物のことです。遺伝子組み換え作物は元の作物と比べて、DNAに他生物の遺伝子が導入されていること、その遺伝子により新しいタンパク質が作られることが異なります。なお、遺伝子が直接に害虫耐性効果等があるわけではなく、その遺伝子の作用によって作られるタンパク質が、目的とする有用性(害虫耐性等)をもたらします。

大きく分けて以下の手順を経て作られます。

 

(遺伝子組み換え作物の作成手順)

ⅰ      ある生物から目的とする有用な遺伝子を見つけ、その遺伝子だけを取り出す

有用な遺伝子には、害虫耐性や食用部分の品質向上をもたらすもの等が挙げられます。

 

ⅱ      改良しようとする農作物の細胞の核に、取り出した遺伝子を導入する

別の生物を改良したい作物に入れるための方法として代表的な方法は以下の2つです。

アグロバクテリウム法: 植物に感染する土壌微生物のアグロバクテリウムが元々持っている遺伝子組換え能力を利用します。

まず、アグロバクテリウムのプラスミドと呼ばれる運び屋DNAを取り出し、このDNAに有用遺伝子をつなぎます。このプラスミドをアグロバクテリウムに戻し、改良したい作物に感染させます。アグロバクテリウムは、感染先の植物に自らのゲノムを組み込む能力をもっています。その自らのゲノムの変わりに有用遺伝子を組み込むと、感染先の植物に有用遺伝子が組み込まれるというしくみです。

 

パーティクルガン法:目的の遺伝子をコーティングした金の微粒子(0.6~1.6μm)を、高圧ガスなどの力で植物細胞に打ち込むことによって、遺伝子を導入する方法です。

 

ⅲ      遺伝子導入処理をした細胞の中から、目的の遺伝子が確実に導入されているものだけを培養・選抜し、増殖させ、植物体を再生

 

ⅳ      得られた遺伝子組換え農作物の中から、有用な形質が発現している個体を選抜し、交配などにより、この形質が次世代に安定的に伝わるかを確認

  

図の出所:遺伝子組換え農作物の現状について 農林水産省

 

このように遺伝子組み換え作物は、遺伝子全てではなく、目的とする1~数個の遺伝子だけを、改良したい生物の細胞の中に導入して、目的とする形質を発現させようとするものです。

遺伝子組換え作物のDNA検出検査は、このように導入した数個の特定遺伝子に注目しこれを(または、その存在を確認することができる特定の部位)を検出するものです。また、導入した特定の遺伝子の作用によって作られるタンパク質を検出する方法(イムノクロマト法)も広く行われています。この2つの方法はそれぞれ長所と短所があるため、上手く組み合わせることが検査の実効性を上げることにつながります。

 

(検査の方法やそれぞれの特徴は次回にて!)

 

参考資料:遺伝子組換え農作物の現状について 農林水産省

国立研究開発法人 農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター

遺伝子組み換え作物に関するQ&A